着物フェチ

鹿の子のお引きずり振袖のための下襲

重ね着フェチなので着物を着るときは大抵二枚以上重ね着することになる。同じ寸法の着物を重ねてもよいのだが、下重ね用に一枚縫ってみようと思った。今時は二枚襲といってもほとんどが比翼仕立てだ。外見は同じに見えるが、中身は空っぽであまり好みではな…

うなじの誘惑

衣紋を大きく抜いてお振袖を着ました 白いうなじに後れ毛が二筋三筋 後からそっと抱かれて唇を押し当てられたら そのまま崩れ落ちてしまいそう

仮初めの花嫁

私はお金で買われたお妾花嫁。 夜毎きらびやかに装われて殿方のお褥へ召されるのです。 旦那さまに可愛がられてめくるめく一夜を過ごした私・・・ 気がつけばはや東雲。 初々しい花嫁姿はすでになく、落花狼藉の体。 私は寝乱れた白無垢の長い裾を引きずりなが…

鹿の子の振袖

鹿の子の襦袢の魅力に目覚めたのはかれこれ二年くらい前だろうか。 着物の下に着る長襦袢なので袖口や振りからチラッと見えるだけで他はほと んど見えない。 なのに全体に手の込んだ絞り染めの絵羽模様が施されている。見えないとこ ろになぜそれほどまで手…

若紫綸子引き振袖三枚襲に白緞子の打掛

以前寸法をお直しした打掛は花嫁衣裳の白無垢だ。 白の引き振袖に重ねて花嫁の純潔と無垢を象徴する。 そんな白打掛だがせっかくなので、他の衣裳と合わせてみたらまた違った雰囲 気がでるのではないだろうか。 そこで若紫のお引きずりの上に羽織ってみた。 …

久方ぶりの打掛

白無垢の掛下を自分の寸法に合うようにお直ししたことは以前に書いた。 白無垢の引き振袖として、また引き振袖の下襲としても重宝で愛用してい が、打掛を着たくても寸法が合わないので、うまくいかない。 白無垢の引き振袖を着ていると、それだけでは何とな…

花嫁人形

後ろ手に縛りあげられ、広間を引き回される花嫁。 なめらかな沙綾形紋綸子の白無垢に食い込む荒縄…その繩尻は男の手に握ら れている。 うつろな目をした花嫁は白無垢の裾を引きずりながら、さまようように部屋の中をただ歩き回る。 その時花嫁の口からつぶや…

若紫のお引きずり振袖

長らく不順な天気をもたらしていた秋雨前線も消えて、ようやく本格的な秋がやって来たようだ。 昨日の朝、山荘のベランダの寒暖計はこの秋初めて10℃を下回った。 涼しいと言うより一気に寒さがやって来た感じで、季節の巡りの早さに驚かされる。 ともあれ、…

鹿の子の引き振袖

何気なくアンティークの鹿の子絞りの長襦袢を手に入れ、自分のサイズに直して着てみたら、案外気に入った。 それ以来鹿の子が気に入って何枚か仕立て直して楽しんできた。 しかし襦袢は下着なので、着物を着るとほとんど見えない。せっかく手間暇掛けて染め…

風薫る

ついこの間桜が咲いたと思ったら、もう五月も半ばを過ぎてしまった。 山荘のベランダへ出てみると木々の梢の鮮やかな緑が目に染みるほどだ。 この時期になると、気温も日毎に上がって、森を抜ける風も心なしか湿り気を帯び梅雨入り間近を思わせる。 着物を着…

お引きずり襦袢のための打掛

地紋を織り込んだ柔らかな緋綸子に鶴や雲取などの吉祥紋を絞り染めにした鹿の子絞りの襦袢は、華やかで艶めかしく、このところその魅力に取り憑かれている。 絞り染めは布を括って防染し模様を現した染色技法で括り染めともいわれ、その歴史はかなり古いよう…

お引きずり襦袢その2

先日縫ったお引きずり襦袢は襦袢としてはあまり使い物にならないが、せっかくなので着てみることにした。 普通のお端折りをして着る着物に着るには襦袢もお端折りをしなくてはならず、お端折りが二重になってすっきりとした着付けは望めない。 着るとすれば…

お引きずり襦袢

以前アンティークの鹿の子の襦袢を手に入れ、仕立て直して着てみたら存外具合がよく気に入った。 それ以来鹿の子の襦袢にはまっている。 ネット通販やオークションサイトを覗いてみると昔の鹿の子絞りの襦袢がたまに出ている。 ほとんどが戦前のものと思われ…

アンサンブル

先日仕立て直した鹿の子の襦袢は思いのほか気に入った。 それでもう一枚欲しくなり、たまたま同じような色柄のものがあったので手に入れてしまった。 しかし、考えてみれば同じような襦袢が二枚あってもいかがなものか、少し違った柄にした方がよかったかも…

おからげ

森の中を吹き抜ける生ぬるい風が、いつしかひんやりとした乾いた空気に変わってきた。気が付けばもうすでに神無月、季節は滞ることを知らない。 そんな心地よい風に誘われて久しぶりに草履を履いて外へ出てみた。 お引きずりを着て外へ出るには長い裾を何と…

慮外者ッ(2)

いざ! 右に左に敵を薙ぎ払う姫君。 しかし多勢に無勢、さしもの姫も次第に力尽きる。 ーむむ、思わぬ不覚… ー下れッ 一歩でも近づいたら 妾はこの懐剣で喉を 突きます と、そこへ現れたのは前髪立ちながら、城内屈指の遣い手と評判の御小姓組若侍。瞬く間に…

白無垢の引き振袖

台風一過の秋晴れといえば、暑くもなく寒くもなく爽やかな秋空を思い浮かべるが、今日は真夏のような暑さが蘇った。 山荘では昨日と一昨日は今日の暑さが嘘のようにうすら寒く暖房が欲しいほどだった。 寒さを感じるようになると恋しくなるのはやさしい絹の…

大振袖お引きずり

予報では今年の夏は猛暑で残暑も厳しいとのことだった。 関東では七月は天気も良く暑い日が多かったが、八月に入るとどんよりとした曇り空が続き、その割には蒸し暑く、すっきりとした夏空はほとんど見られなかった。 九月に入ると残暑どころか一足飛びに秋…

春宵(5)

今日も秋の空は澄み渡り、お庭の紅葉がまばゆいばかりでございます。 さりながら乳母の心は晴れるどころか暗く沈むばかりでございます。 このところの若君の心にいかなる魔物が棲みついたのでございましょうか。 今日も今日とてなよなよと、まるで姫と見紛う…

髪結い亭主

髪結いの亭主といえば男なら誰しも一度は憧れるものだろう。 何しろ女房に稼がせて自分は遊んで暮らせるというのだから、こんないいことはない。 世間知らずのちょっとぐうたらな男を想像するが、そんなステレオタイプとはちょっと違った髪結い亭主の話を昔…

時代劇の愉しみ

豪華な調度に彩られた寝室をぼんぼりの柔らかな灯りが照らす。枕屏風の側近く延べられた華やかな夜具。その二枚重ねの豪華な褥の上で柔らかそうな綸子のお引き摺りの部屋着をまとい、鴇色のしごき姿で脇息に寄り添うのは浪路。ゆったりと抜いた衣紋から覗く…

花嫁のイメージ

文金島田に髪結いながら 花嫁御寮はなぜ泣くのだろ 泣けば鹿の子の袂が切れる 涙で鹿の子の赤い紅にじむ 高島田に結い上げた黒髪にまばゆいばかりの簪。 赤い鹿の子の豊かな袂をゆらしながら嫁ぐ花嫁。 祝言の宴。見知らぬ人々のさんざめき。 はや宴もたけな…

春宵(4)

若君様、今宵も御城代様下屋敷へお渡りの由にございます。 湯殿の用意も整ってござりますれば、そろそろ湯浴みなどなされてはいかがかと存じまする。 乳母がお背中などお流しいたしましょうほどに。 まあ、なんと餅肌とはよく言ったもの。お湯に浸かった後の…

振袖を縫う(2)

ここまでくるともう出来上がりは目前で、針を運ぶ指先にも力が入る。 一時も早く着てみたくていつもなら気が逸ってしまうのだが、今回は楽しむようにゆっくり、丁寧にやった。 衿を始末して、最後に共衿をかけてできあがりだ。 最初の仮仕立ての時と同じよう…

振袖を縫う(1)

振袖や訪問着などの晴れ着は絵羽模様が多い。着物をキャンバスに見立て一枚の絵のように模様がつながっている。 反物状態でではその模様がわかりずづらいので、着物の売り場では仮絵羽にして衣桁などにかけて展示していることが多い。 ふつうはそのまま呉服…

春宵(3)

秋も深まり、集く虫の音もなにやら寂しげになってまいりました。 光陰矢の如しと申しますが、この乳母の年になりますと月日はあっという間に過ぎ去ってまいります。 若君様にお仕えして早や十幾年、ついこの間まで乳母のお乳を無心にむさぼっていたと思った…

薪ストーブと振袖

立春はとうに過ぎ、暦の上では春だというのに、まだ厳しい寒さは続く。 特にここは人里離れた森の中、標高は500メートルに満たないのだが、自宅周辺より3~4度ほど気温は低い。 晴れた日には日差しが部屋の奥まで注いで暑いくらいだが、日が落ちると急に冷…

初草履

いままで草履というものを履いたことがなかった。 女物の着物を着るのが好きだが、いくら好きだからといって着物を着たまま外へ出て行くわけにはいかない。出て行きたいのはやまやまだが相当の覚悟が必要だ。 着物を着ても家の中で過ごすだけだから草履など…

裁縫依存症

若いころから体を動かすことが好きで家でじっとしているのが苦手だった。 休みの日には森の中で木を伐ったり、重機で切株を掘り起こして整地したり、小屋を建てたりとそんなことばかりやってきた。 しかし寄る年波には勝てずというか、最近外での活動は徐々…

玉の緒の長き袂を・・・

肩からすうーっと床に垂れた極彩色の細長い練り絹。 振袖の魅力は何といってもその長く豊かな袂だ。 着る人の動き合わせて優雅に舞うその様はなんとも形容しがたい。 女なら一度は着てみたいと思うのは無理もないことだ。 それどころか男でさえ虜にしてしま…