2022-01-01から1年間の記事一覧

雪乃幻想(10)

師走も間近というその日、吹き荒れた冷たい木枯らしもようやく治まって辺りに夜のしじまが漂うころ、広大なお屋敷の奥まった一室で今宵も雪乃はお床入りのお支度に余念がないのでございました。白塗りの顔に真っ赤な紅が差され、柳のような眉が引かれるとお…

雪乃幻想(9)

「今宵のお寝間の装いはこれにしましょうね」そういいながらお母さまが着せてくれたのが赤い鹿の子の綿入れお引きずり振袖でございます。分厚い裾ふきが花魁の胴抜き衣装を彷彿とさせる二枚襲のお引きずりは雪乃のお気に入りなのでございます。 腹を痛めた息…

秋恋し

連日の暑さと湿気で好きな女着物を着ることもままならず、味気ない日々を過ごしている。 こんな時は以前撮った写真でも眺めながらしばし自らを慰めるしかない。 この着物は柔らかな綸子地に四季の花々を染め付けた友禅の振袖で、数年前に仕立てたものだ。 二…

雪乃幻想(8)

艶やかな引き振袖をまとい、優雅に舞うたおやかな娘。 しかし次の瞬間信じがたいことが・・・ 娘はやおらお引きずりの裾前を割ると、露わになったのは股間から屹立する逞しい肉棒。 娘は姿見に映った己の姿を一瞥し、満ち足りた笑みを浮かべる。 そして何事…

鹿の子の引き振袖二枚襲

前回取り上げた極太ふき引き振袖二枚重ねに文庫帯を締めてみた。 花魁が着るような艶めかしい衣裳に、武家娘や奥方の象徴である文庫帯の取り合わせは奇妙で違和感をぬぐえない。 でも常識の枠を超えたところに意外な新鮮さや面白みがあるものだ。 鬼平の奥方…

春遠からじ

弥生とはいえまだまだ寒さは続く。 その寒い時期だけの楽しみが重ね着だ。 いつの間にか着物一枚だけでは満足できなくなって二枚、三枚と重ねて着るのが習い性になってしまった。 雪国育ちで子供のころから綿入れに馴染んでいたせいか今でも綿入れに執着があ…

雪乃幻想(7)

雪乃は妄想の世界に棲む妖精だ。 歳は十代半ば色白で目元涼やかな男の子だ。幼いころ母が再婚し連れ子として義理の父親とともにその広大なお邸に住むことになる。 しかし義父にその美貌に目を付けられ、十三歳の時に同衾を迫られて白無垢の花嫁姿で初夜を迎…