お引きずり襦袢

以前アンティークの鹿の子の襦袢を手に入れ、仕立て直して着てみたら存外具合がよく気に入った。
それ以来鹿の子の襦袢にはまっている。
ネット通販やオークションサイトを覗いてみると昔の鹿の子絞りの襦袢がたまに出ている。
ほとんどが戦前のものと思われるが、手の込んだ絵羽模様の絞りが丹念に施され、縫製もしっかりしていて、襦袢にはもったいないほどである。
恐らく晴れ着として盛装の時に着られたものだろう。ということは普段着と違ってあまり頻繁に着られることはなかったと思われる。
大切に扱われていたので染みや傷みはなく、年代は感じさせるが着用には全く支障はないのだ。
ただ何分昔のものなので全体に寸法が小さく、そのままでは着ることはちょっと無理なのでお直しが必要になってくる。

今まで長襦袢、綿入れはんてんと仕立ててきたので今度は何にしようかと考えたが、お引きずりの襦袢にしてみようと思った。
しかし半襦袢長襦袢というのはあるが、お引きずり襦袢というのはあるのだろうか、あまり聞いたことがない。
時代劇などを見ていてもお引きずりの襦袢姿は目にしたことがない。ただお端折りをして長襦袢を着た姿は見たことがある。あれをお端折りなしで着ればお引きずり襦袢になるのだろうか。
なんだかよく分からないが、いずれにしても自分は長襦袢もお引きずりも好きなのでお引きずり襦袢も悪くないだろう。
というわけで縫い上がったのがこちらだ。
               
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柔らかな紗綾形紋綸子地に疋田絞りで飛翔鶴を、桶絞りで松を描いた艶やかな襦袢で手を加えるるのが惜しいほどだったが、全部解いて最初から縫い直した。

今日では手間のかかる絞りの襦袢など作られているのだろうか。
既製品などはないだろうから、誂えることになるのだろうが、人件費を考えると襦袢一枚がとてつもない高価なものになってしまうのでは・・・と余計な心配をしてしまう。

それはともかくこんなお引きずりの襦袢など、普通の着物の襦袢には着られないし、無用の長物かもしれない。
しかし何となく艶めかしく、様々な妄想を掻き立ててくれる。

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