花嫁のイメージ

文金島田に髪結いながら
 花嫁御寮はなぜ泣くのだろ
泣けば鹿の子の袂が切れる       
 涙で鹿の子の赤い紅にじむ
 
高島田に結い上げた黒髪にまばゆいばかりの簪。
赤い鹿の子の豊かな袂をゆらしながら嫁ぐ花嫁。
 
祝言の宴。見知らぬ人々のさんざめき。
はや宴もたけなわ、花嫁は促されて奥座敷へと向かう。
 
薄明かりになまめく初夜の褥を前に花嫁は静かに帯を解く。
重い花嫁衣裳が肩から滑り落ちると、花嫁の頬を一筋の涙が伝う。
赤い鹿の子の長襦袢姿になった花嫁はそっと華やかな夜着に身を沈める。
 
やがて熟柿の匂いにまみれた主が現れ、一夜の慰み物にされる花嫁。
 
花嫁というと私はこんな場面を想像する。
笑顔にあふれ、幸せいっぱいの花嫁というのが普通だろうが、私の花嫁は哀れで物悲しく、隠微なイメージが付きまとう。
それは冒頭に掲げた花嫁人形の唄のせいなのかも知れない。