若かりしころ…

まだ二十歳になったかならない頃、きっかけは忘れてしまったが何かの折、振袖を着せてもらったことがあった。本格的な女装をするのは初めてであり、周りの評判もまあまあでうれしかったことを覚えている。最初きついと感じた帯の締めつけもしばらくして慣れてくると、むしろ心地よい拘束感を伴って身体になじんだ。

やがて小さな料亭のようなところへ連れていかれ、酒の席となった。いつもはあまり目立たない自分にみんなの視線が注がれ、一座の中心にいることがうれしかった。注がれるままに盃を口に運び、高揚感に浸った。

 

・・・ふと気が付いて顔を上げると辺りは静まり返っていた。慣れない酒のせいか、私はいつの間にかテーブルにうつ伏せて眠ってしまっていた。何人かいた仲間の姿はすでになく、いつの間にか見知らぬ紳士が横に座っていた。

「よく眠っていたね」

渋い結城を着流しにした紳士はそう言葉をかけると、立ち上がって隣の部屋を隔てるふすまを開けた。そこには華やかな夜具が二つ延べてあった。艶めかしい閨の風情がまぶしく、胸の鼓動が高鳴った。

紳士が促すように手を差し伸べると、私は反射的にその手を握った。私は抱きかかえられるようにして隣室へ運ばれると褥へと崩れ落ちた。白いシーツに華やかな振袖の花が散った。

 

それまでも似たような場面は何度かあったが、どこか躊躇するものがあり一線を越えるようなことはなかった。

その日は振袖を着ていたことで気持ちが素直になりありのままを受け入れることができた。

振袖姿で褥に横たえられて帯を解かれ、赤い襦袢姿にされると、

「灯りを消して・・・」

私は娘のような気持になってそうつぶやいた。

その日私は初めて女にされた。

 

その紳士には思いのほか気に入られその後しばらく関係が続いた。

逢瀬の日は近くの美容院で振袖を着せてもらいタクシーで指定の宿へ向かった。小柄で童顔の私は美容院でお化粧してもらうと男には見えなかった。あるときは日本髪に引き振袖まとった半玉姿で料亭の門をくぐったとき、女中さんに本物と間違われて、くすぐったい思いをしたこともあった。

 

遊びなれた紳士はそんな私を面白がって、金に糸目をつけず贅沢な衣裳をふんだんに贖ってくれた。無謀にも私は以前から憧れていた白無垢の花嫁衣裳をねだったりもした。

二度三度と逢瀬を重ねるうち紳士の巧みな導きにより私は女の悦びに急速に目覚めていった。

初めての夜から数か月もしたある夜、白無垢の花嫁衣裳が仕立て上がり、着せてもらっていた時のことだ。

私はなぜかお支度が進むにつれ感傷的になり、お支度が済んで姿見に映る自分の白無垢姿を目にしたとき目頭が熱くなった。仲居さんに手を引かれながら部屋に戻り紳士の顔を目にした途端、堪えきれず大粒の涙が頬を伝わった。込み上げる感情を抑えきれず私は紳士の胸にしがみついてしゃくり上げた。

紳士は宥めるように背中に手を回すとそのまま私を仮初めの初夜の褥へと導いた。

白無垢姿でお床入りした私はその夜、抑えきれないほどの喜悦に襲われ狂喜し、錯乱した。身体の芯が溶けるような絶頂のうねりが絶え間なく押し寄せ、それはいつ果てるともなく続いた。初めて知る深い女の悦びだった。

女として逝くことの痺れるような愉悦…その誘惑から逃れることはもはや無理と悟った私は普通の男として生きていくことを諦めた。

それ以来数多くの出逢いと別れを繰り返してきたが、もちろん相手は全て男であった。

当時は仕事もあったし普段は男の恰好をして暮らしていたが、洋服姿で殿方に逢うなどということは考えられなかった。

相手は変わっても私は相変わらず振袖をまとって逢瀬を重ね、紅閨の褥に咲く大輪の振袖の花を無残に散らされながら殿方に征服される悦びに酔い痴れた。

 

ふとした偶然から出逢った紳士に導かれて知った、艶やかな振袖をまとって殿方に抱かれる悦び…その性癖は何十年も経た今でも変わることはない。

さすがに袋帯を締めて娘のような盛装ということは少なくなり、代わりにお引きずり振袖に前帯結びが定番になってきた。



還暦を過ぎた男が振袖をまとってお床入りとは尋常ではないが、それが好きなのだから仕方がない。それにあの方はそんな私を愛しいと言って可愛がってくれる・・・

艶めかしいお引きずりをまとって殿方に抱かれ、女の悦びに随喜の涙を流す・・・

初老の冴えない男にもそれなりの幸せを与えてくれる天に感謝せずにはいられない。

 





女形歌手

着物好きの人なら北岡ひろしという演歌歌手をご存知の方も多いと思う。

メジャーではなくテレビにはほとんど出ないしこれといったット曲もないようだが、一部にはコアなファンもいるらしい。

その特徴は何といっても女装の着物姿で歌うということだ。髪は日本髪に結い(鬘だと思う)艶やかな着物姿で歌う様は自然で、男を感じさせない。

初めてその名前を知ったのはまだネットなどない頃だからずいぶん昔のことだが、何気なくラジオを聴いている時だった。

どんな番組だったか忘れたがアナウンサーに

「きれいな振袖を着てうれしい?」

と聞かれ、

「はい…」

と言葉少なに答えていたのが印象的で名前を記憶した。

当時から女の着物に執着していた自分は、男なのに振袖を着て歌う歌手がいることに軽い衝撃を受け、羨ましく思ったものだった。

後年ネットでその名前を見付け、初めて画像や映像を見たのだが、期待を裏切らない容姿に心が躍った。

検索するとかなりの数がヒットするが、お引きずりを着て歌うこの映像が好感度抜群だ。

着物フェチとして言わせていただければ、テレビなどで折角振袖やお引きずりを着ているのに、すぐにアップにしないでもっと引いてじっくり全身を映してもらいたい。

その点この映像はお引きずりの裾のアップからという斬新な入りでお引きずり姿をたっぷり見せてくれるカメラワークも秀逸だ。

何よりいいのは北岡ひろしが着ている二枚重ねのお引きずり衣裳だ。

落ち着いた色合いの柔らかそうな絹物で裾ふきは太く、二枚重ねの袖ぶきもふっくらと愛らしい。

こんな着物を着てみたい…としみじみ思う。

帯もこれはこれで良いのだが、文庫に結んで太い丸ぐけの帯〆を締めた武家の若妻風とすれば文句なしだ。

https://youtu.be/rsPJrayQ5mM?si=4yaVSzmk_pcDasul

 

 

お引きずりが好きすぎて・・・

年を取ると歳月の経過が加速度的に早く感ずる。お屠蘇を飲んだのもついこの間のような気がするが、今年ももう半ば過ぎようとしている。

ブログも更新しようと思いながら一日伸ばしにしているうち半年以上過ぎてしまい、なんとこれが今年の初投稿だ。

 

長襦袢は何枚かあるのだが、どうしても気に入ったものを愛用しがちでその分傷みも早い。お気に入りの綸子の赤い長襦袢が傷み始めたので、新しく仕立てねばと思っていたところ、ふと長襦袢もお引きずりにしてみてはと思いついた。

お引きずりの長襦袢など聞いたことがないが、白い半衿を掛けた真っ赤なお引きずりの長襦袢をまとった自分の姿を想像すると、矢も楯もたまらず早速仕立てにかかった。

襦袢丈は普通135センチ前後なのだが、お引きずり分をとって200センチとした。この長さになると平置きにしても裁縫台に乗りきらず取り回しに苦労する。

衿付け止まりから下の部分を綿入れとして張りを持たせた。こうすると着たときに褄から裾にかけてすっきりとまとまるのだ。

 

普通の着物は裾が床に付かないように着るが、お引きずりは裾に分厚い綿を入れてそれを長く引きずる。

自分のまとっている着物の裾が床いっぱいに広がって、それをズルズル引きずって歩く・・・

何枚も重なった分厚い綿入れの裾を重そうに引きずる・・・ああ、うれしさが込み上げてくる…お引きずりはどうしてこうも私の心を昂らせるのか。

長く引いた裾の柔らかな練り絹が太腿からふくらはぎ、足首に絡んで得も言われぬ心地よさだ。

そのへんのところは映像のほうがわかりやすいので動画にしてみた。

ひたすら裾を引きずって歩くだけの代わり映えのしない映像だが興味のある方はご笑覧のほどを。

 

https://youtu.be/oDUqzjCW458?si=d0XDuIuO9BDBSfrB

 

花魁風胴抜曳振袖

裁縫を始めてから長着、振袖、引き振袖、羽織などいろいろな着物を仕立ててきた。その時自分が着てみたいものを縫ってきたのだが、数が増えると保管場所にも困り、新しく仕立てるのはしばらく見合わせることにした。すると暇を持て余し退屈するようになり、今更ほかの趣味を始めるのも億劫で結局また裁縫を始めるようになってしまった。

裁縫は幅37センチ前後、長さ十数メートルの一枚の布を切ったり縫い合わせたりして着物に仕立てる作業で、やっている時は没頭して時間の経つのも忘れてしまう。

そんな訳で新しく仕立てたのがこの胴抜の引き振袖だ。

 

豪華な打掛をまとった花魁がその打掛を肩から滑り落とすと顕れるのが艶めかしい胴抜姿だ。

実物はまだ見たことがないが画像で見ると、身頃の腰から上と下が別布で、上が麻の葉紋様等の染めで下が豪華な織の生地になっていて艶冶な風情を醸している。二枚重ねの裾は分厚い綿が含められて圧倒的な存在感だ。

 

この通りに仕立てるとなると生地も手に入らないしなかなか難しいので、自分なりにアレンジして仕立ててみた。

本来なら袖は普通の着物と同じくらいの丈なのだが、より華やかにと振袖にし、袖と腰から下の身頃は重厚感を出すために綿入れ仕立てとした。

 


こんな艶めかしい着物はそのシーンが自ずと限られてくる。そう、愛しいお方に可愛がられるときの
艶姿・・・。

 

 

 

 

 

 

 

・・・この前あの方が見えたのが今月のはじめ頃、今日はもう晦日だから一か月近くのご無沙汰。

この歳になると若いころのようにせっかちではないが、しばらく会わないと何となく落ち着かない気分になる。

そんな折、この着物もようやく今日で仕上がりかな、などと思いつついつものように針を運んでいると、あの方から連絡があり今日これから来るとのこと…。

お寝間の衣裳として縫い始めたこの着物、縫いあがったその日が久方ぶりの逢瀬と重なるとは…幸先のよい偶然に心ときめいた。

この胴抜のお引きずりをまとって今宵あの方に抱かれる・・・いずれは帯を解かれ褥に落花狼藉の痴態を晒すことは分かっていても、せめて最初だけでも嫋やかで慎ましやかな女姿でお寝間入りしたいのだ。

 

嬉しさにはやる心を抑えながら最後の一針を縫い終えた。

 


youtu.be

雪乃幻想(13) 衣桁責めその2

 

「早くせぬかッ」
険しい声に気押しされたように雪乃は裾前に手をやるのでございます。
あでやかな友禅のお引きずりの前をかき分けると赤い鹿の子の長襦袢、その下には真っ赤なお腰が…ぷっくり膨らんだそのお腰の裾前を割ると雪乃の男の徴がそそり立っていたのでございます。
ああ、お母さまの前でこのようなはしたない姿を…そんな思いに雪乃の肉棒は萎えるどころか被虐の悦びにますます硬直の度を増していくのでございました。
「ほう、艶やかな振袖の奥深くそのような物を秘めていたとはのう。それは何じゃ」
「……」
「言わぬか」
「雪乃の核(さね)にございます」
「なに、さねというか」
「はい…」
「妾をたばかるか」
お母さまはそう一喝すると、やおら胸高に差した懐剣袋の房紐を引くと懐剣に手をやったのでございます。
「お、お母さま、お許しください」
時鳥の凄惨な姿が頭をよぎった雪乃は慌ててそう口走ったのでございます。
お母さまは音もなく鞘を払うと順手に持った懐剣を雪乃の股間へ突き付けたのでございます。
「ヒ―ッ」
雪乃は悲鳴を上げたのでございました。
するとお母さまは刀身の腹を雪乃の硬直に当て
「このようなさねなどあるものではないわ。本当のことを申すのじゃ」
そう言いながら今度はぴたぴたと叩くのでございました。
「ああ、お赦しを…雪乃が悪うございました。本当なことを…」
雪乃は必死で詫びごとを口走ります。
しかし言葉とは裏腹な雪乃心…ああ、うれしい…お母さま…雪乃はお母さまの目の前で裾前を割って、硬直した雪乃のお○○○○を晒しているの…それを懐剣で嬲られて…夢のよう…お母さま,もっと、もっと雪乃を虐めて…
「その場しのぎの嘘をついたり、留守の間に良からぬことを企んだり、そなたは本当に性悪じゃ。今宵はその性根を叩き直してやるわ」
お母さまはそう言うと打掛を肩からさっと滑り落とすと、部屋の隅にある衣桁を重そうに引きずりながらお部屋の中ほどに据えたのでございました。
その衣桁は書院造の武家屋敷にふさわしく武骨で頑丈な造りでございました。
雪乃はその間に急いで赤ちゃんを背から下すとお部屋の端へ非難させたのでございます。
ねんねこ袢纏にくるまれて寝かされた赤ちゃん人形のあどけない顔を見ながら,雪乃は話しかけたのでございます。
「お母さまはこれからお祖母さまのお仕置きを受けるの。どんな辛い仕置きでもお母さまが悪いのだから仕方がないの…今夜は無理だけどいつか二人でお父さまのところへいきましょうね」
そんなことを呟きながら雪乃は己の恥ずかしい姿を赤ちゃんにみられないように、ねんねこ袢纏でその顔をすっぽりと覆ったのでございました。
「なにをぐずぐずしているのじゃ」
厳しいい叱声にびくっとして立ち上がった雪乃は引き寄せられるように衣桁に向うと、待ちかねたようにお母さまは雪乃の両の手を衣桁の桟に腰ひもで括り付けたのでございます。
続いて雪乃の細い両足首は下桟に縛り付けられたのでございました。
普段はきらびやかな衣裳が掛けられるはずの衣桁に、艶やかなお引きずり振袖姿の雪乃が大の字に括り付けられているのでございました。
更にお引きずりの長い裾の褄先は左右に大きく開かれて、その先は縦桟に結ばれたのでございました。
すると顕になった紅い鹿の子のお襦袢にはすでに大きな膨らみが…一時小康を保っていた雪乃の男は再びむくりとその鎌首をもたげ始めていたのでございます。
目敏くその膨らみを見付けたお母さまは懐剣の先で小突きながら、
「この膨らみは何じゃ」
「……」
言葉で嬲られたうえに小突かれ弄られた雪乃の秘所は熱き血潮が凝結し、真っ赤な薄絹の中でもがいているのでございました。
するとお母さまは懐剣の先でその薄絹を器用に払い除けたのでございます。
ああ、何という恥ずかしい姿…薄化粧に艶めかしいお床入り姿に装った雪乃は衣桁に大の字に括り付けられたうえ、裾前を割られて股間からその姿にあるまじき巨根を垂直に突き立てているのでございました。
艶めかしい練り絹を押しのけるようにしてそそり立つ肉塊の先には早くも透き通った粘汁が滲み出し、雫が一筋糸を引いているのでございました。
「二つ枕に三つ重ねのはずが、衣桁責めの晒し者とは哀れなことじゃ。少しは身に染みたか」
「ああ、お母さま、雪乃が浅はかでございました。お赦しを…」
そう詫びる言葉とは裏腹に雪乃の心は湧き上がる被虐の悦びに溢れていたのでございます。
そんな心のうちをおくびにも出さず、
「ああ、苦しい…お母さま早くここから下して…雪乃が悪うございました。もう二度と…」
「少しはこたえたようじゃの。しかし妾ををいつもと同じと思ったら大間違いじゃ。今宵の母を百合の方の化身と思うがよい」
その言葉を聞いた雪乃は震え上がったのでございます。
時鳥のように嬲り殺しに…まさか…千々に乱れる雪乃の心でございました。
しかしお母さまは懐剣を鞘に納めると、手元の箱から異形のものを取り出したのでございます。
始めて目にするそれは荒縄を丸めたたわしのように見え、紐でできたこけしのようにも見えたのでございます。
「そなたの邪まで淫らな心はきっとこの肥後ずいきが浄めてくれるでしょう」
お母さまはそう言うと、たっぷり水を含んだ肥後ずいきを取り上げきゅっと一絞りして衣桁の後に回ったのでございます。
雪乃は何が始まるのか怪訝に思っているといきなりお引きずりの裾がまくられ、あっという間に雪乃の双丘が露わにされたのでございます。
その双丘に挟まれた雪乃の菊門はすでに熟れた果肉のように柔らかく、甘い蜜をたたえているのでございました。
「お母さま、それだけはお許しを…」
雪乃はお母さまの意図を察してそう懇願したのですが、お母さまは容赦なく肥後ずいきの先を雪乃の菊座ヘ当てがったのでございます。
すると湿り気のある柔らかな異形はあっという間に菊門を侵し、ずぶずぶと雪乃の中へ…。
お母さまの息子に生まれた雪乃は今、娘のように艶やかに装われて、菊門を異形の物体に犯されながらまるで着物のように衣桁に架けられているのでございました。
そんな雪乃の姿に目を当てていたお母さまは何を思ったか、部屋の端へ寝かせた赤ちゃん人形を取り上げたのでございます。
「そなたの好きな人形に己のあさましい姿を見てもらうのじゃ」
そう言いながら赤ちゃんを雪乃の目の前に座らせたのでございました。
「ああ、お母さま、やめて」
思わず雪乃は叫んだのでございます。
今の雪乃の姿を赤ちゃんに見られることは雪乃にとって身を切られより辛いことでございました。
さりとて四肢を縛められている雪乃は身を隠すことも能わず、
「お母さま、お願い…お人形を隠して…」
そう懇願する雪乃を尻目に、お母さまは傍らに脱ぎ捨てた打掛を手に取ると鮮やかな所作で身に纏ったのでございます。
「しばらくそうしてわが身を省みるのじゃ」
お母さまはそう一言いい残し、打掛の裾をさっと翻すと見栄を切るように襟を扱いたのでございます。
それからおもむろに打掛の長い裾を引きずりながらほの暗い奥へと姿を消したのでございます。
雪乃は己の身の上も忘れ、お母さまの役者のように美しいい所作にただ見とれるばかりでございました

異変に気が付いたのはそれからほんのしばらく後のことでございます。
「はぁ~…」
思わず雪乃の口から吐息が漏れたのでございます。
熱い…肥後ずいきを咥えたお菊がかすかな痒みを伴いながら熱を帯びているのでございました。それは徐々に増幅しながら得も言われぬ心地良さへと…
堪らず不自由な態勢で腰をくねらせると、着重ねた練り絹が肥後ずいきを程よく刺激し、雪乃は悶え続けたのでございます。
心地よさに身を委ねながら薄目を開けると雪乃の目に入ったのは目の前に座った赤ちゃんの姿でございます。
「あ、綾乃ちゃん、お母さまを見ないで」
浅ましい姿を見られる恥ずかしさに必死でそう叫んだのでございまが、お人形にそんな思いが伝わるはずもなく、つぶらな瞳を雪乃に向け続けているのでございました。

雪乃は肥後ずいきのもたらす狂おしいほどの快楽にその身を委ねながら、身悶えし、嬌声を上げ、歓喜の涙を流したのでございます。
終わることのない肛淫の悦び…。
やがてお引きずりの裾前を割って屹立した雪乃の男の先から白濁が溢れ、たらたらと流れ始めたのでございます。
栗花の香を漂わせながらそれは止めどなく流れ続けるのでございました。

雪乃幻想(12) 衣桁責めその1

お母さまの留守を良いことに雪乃は寝化粧もほんのりと艶めかしいお寝間の装いに赤ちゃん人形をおんぶしてお義父さまのお閨へと向かったのでございます。
こんな雪乃の姿を見てお義父さまはどんなお顔をなさるかしら・・・
その時ある考えが雪乃の頭をよぎり、胸が高鳴ったのでございます。
まさかそれは無理・・・雪乃はすぐにその考えを打ち消します。
・・・しかしそれはすぐに頭をもたげ、思いはより強くなってゆくのでございました。
このままの姿でお褥に召される雪乃・・・赤ちゃんをおんぶしたままお義父さまに可愛がられる雪乃・・・ああ何と淫らで刺激的なこと・・・。
そんな思いに駆られながらお閨へと続く薄暗い廊下の角を曲がった途端、雪乃は凍りついたのでございます。
「お母さま・・・」
お出かけのはずのお母さまが目の前に・・・。
「その姿は何としたことじゃ」
一瞬驚いた様子のお母さまはそう厳しく咎めたのでございました。
なぜお母さまがここに・・・思いもかけない事の成り行きに雪乃は声を上げることもかなわず、へなへなとその場に座り込んでしまったのでございます。
その姿を冷ややかに見降ろしていたお母さまは、やおら荒々しく雪乃の手を掴むと恐ろしいほど力でその手を引いたのでございます。
痛いッという間もなく雪乃はそのままお母さまにズルズルと引き摺られながら奥の間へと引き立てられたのでございます。

今頃はお義父さまのお褥で目くるめく時を過ごしているはずなのに・・・奥の間に引き据えられた雪乃は薄暗い行燈の灯を見つめながら臍を噛む思いでございました。

やがて着替えを済ませて戻ってきたお母さまの姿を見た雪乃は眼を見張ったのでございます。
何とお母さまはお引きずりに打掛をまとって御殿の上臈のようなお姿で、幅広の帯を文庫に結んだ大きな帯山が艶めかしく、胸に手挟んだ金襴の懐剣袋がそこはかとない威厳を醸しているのでございました。

雪乃はとっさに思い出したのは以前芝居で観た御所五郎蔵時鳥殺しの狂言でございます。
お殿様の正室の母百合の方は、側室時鳥が殿様の寵愛を一身に集めるのに心穏やかならず、正室の娘可愛さのあまり時鳥を散々苛め抜き、ついには嬲り殺しにしてしまうのでございます。
その凄惨な場面が鮮やかに蘇り、お母さまのお姿が百合の方に重なったのでございます。お母さまが百合の方ならさしずめ雪乃は時鳥・・・。
普段はめったにお召にならないお母さまの打掛姿は威厳に満ちてお芝居の百合の方を彷彿とさせ、雪乃は思わず身震いがしたのでござました。
お母さまは分厚い打掛の裾をさっと翻すと雪乃の前に立ち、ねんねこ袢纏の黒い襟を掴むと、
「このような格好で旦那さまのお寝間へ向かうとは不埒千番」
と一喝したのでございます。
「お、お赦しを・・・」
ひたすら赦しを乞うしかない雪乃でございました。
「妾の留守をいいことに身の程知らずな」
そう言いながら掴んだ襟をなおもぎゅうぎゅうと締め上げたのでございます。
「あ、赤ちゃんが・・・」
思わず雪乃はそう言うと、
「なに、赤ちゃんとな。そなたは赤子の母親か」
「・・・・・・」
「どうなのじゃ」
「はい・・・」
「ならばその証を見せてみよ」
「証とは・・・」
「裾前を割ってその証を示すのじゃ」
「そ、そのような、お赦しください・・・」
そんな問答を繰り返すうち被虐の悦びを刺激されて雪乃の股間は見る見るうちにその形相を変えていくのでございました。

雪乃幻想(11)

お義父さまのお子をが欲しい・・・そんな唐突な思いが雪乃に心に芽生えたのは先夜のお床入りの最中でございました。
その夜雪乃は床上手の義父さまに焚きつけられた情炎に身を焦がし、女にされた悦びに身も世もないほどに酔い痴れたのでございます。
ああ、雪乃は今、女…うれしい…。でも雪乃はもっと女になりたい…それにはお義父さまのお種を受けて身籠ること…そして義父さまのお子を産むこと…
お褥での睦言ならいざ知らず、あり得ない妄想とわかっていてもその思いは雪乃を捉え、少しずつ心の中で膨らんでいくのでございました。
お義父さまのお種を宿した雪乃はやがて十月十日の月満ちて玉のようなお子を授かる…この妄想に雪乃は疼くような心の昂ぶりを覚えるのでございました。

「お母さま、雪乃は赤ちゃんのお人形が欲しいの…」
ある日とうとう雪乃はお母さまにそうねだったのでございます。
お人形でもよいから赤ちゃんを抱いてみたい・・・お子を産むことが叶わぬ夢と知りながら、せめてその真似事でもして心の慰めにしたいと思ったのでございます。

日を経ずして老舗の人形店から届いたのはおかっぱ頭に振袖をまとった等身大の赤ちゃん人形でございました。
一目で気に入った雪乃はそれからは着物を着せ替えたり、寝かしつけたりとなにくれと世話を焼くのが楽しみになったのでございます。
女の子たちが興ずるお人形遊びを羨まし気に眺めていた子供のころ、今になってその機会が訪れるとはなんと皮肉なものでございましょう。
とはいえ、あどけない顔のお人形と触れていると愛しさが湧いて新鮮な喜びに包まれるのでございました。

「お母さま、ねんねこ袢纏はないかしら…」
抱いたり寝かしつけたりでは飽き足らず、その日雪乃はお引きずりのお部屋着姿でお人形をおんぶしていたのでございます。
雪乃の姿を一瞥したお母さまは、しようのない子ね、といった顔をすると
一旦奥へ引っ込み、綿入れねんねこを手に戻ると、
「あなたはこのねんねこにくるまれて私の背中でよく眠ったものよ」
そう言いながらお母さまはねんねこ袢纏を背中に着せかけてくれたのでございます。
「あなたは妙な子でね、むずかっていてもこのねんねこ袢纏を着ると機嫌がよくなったの」
そういえばこの色柄どこかで見覚えがあるような・・・遠い昔の記憶がかすかな樟脳の香りを伴って懐かしく蘇るのでございました。
幼いころ母におんぶされてくるまれたねんねこ袢纏。今自分が赤ちゃんを背負いながらその同じねんねこ袢纏をまとっている…ああ、こんなことがあるのかしら…夢にも思わなかったことが現実になっているのでございました。
ふんわりと綿を含んだねんねこ袢纏…その懐かしさ、そのやさしさ…
黒いビロードの襟から覗く赤ちゃんのあどけない顔…雪乃は今この子のお母さま…ああ、うれしい…。

夜の帳も降りて辺りにしじまの漂う頃は、雪乃がかりそめの母から妖艶な女へと変わる時でございます。
今宵お母さまは所用によりお出かけでお帰りは夜遅くなりそう。いつもはお母さまにお任せのお閨のお衣裳も今宵は雪乃一人でお着付けしないといけないのでございます。
いつもの白塗りのお化粧の代わりに頬紅をサッと一掃き、口紅を一差し。
紅い鹿の子のお襦袢はいつもより衣紋を大きく抜いて伊達締めをきりっと。自分で着つけると好きなだけ衣紋が抜けるのがうれしい雪乃なのでございます。
薄紫地に一面の桜吹雪をあしらったお引きずり振袖をまとうと二枚重ねの練り絹がしっとりと身体になじむのでございます。
硬い帯は避けて、鴇色繻子の芯抜き帯を前結びにしたのでございます。
一息ついて姿見に見入ると、思いのほか滞りなくお閨のお支度が出来て安どの面持ちの雪乃の姿があったのでございます。

「綾乃ちゃん」
雪乃はお人形にそう話しかけたのでございます。
綾乃はお母さまのお名前。雪乃はお人形をそう呼ぶことにしたのでございます。
寝化粧もほんのり、艶めかしいお寝間の衣裳をまとった雪乃は小さな布団に綾乃を寝かしつけると
「これからお母さまはお父さまのお寝間へ召されて可愛がられてきまますからね。しばらくおとなしくしているのですよ」
そう言いながらふとお人形の顔を見るとなぜかその顔がとても寂しそうに見えたのでございます。
「さあ、そんな顔をしないで…ちょっとの間辛抱してね」
そう言って立ち上がろうとしたその時、雪乃ははっとして身をすくめたのでございます。確かに今聞こえたのは赤ちゃんの泣き声…。
そんなはずはと気を取り直して立ち上がった刹那、またしてもどこからともなく微かな泣き声が…。
気のせいとわかっていても、臆病者の雪乃はそのままやり過ごすことができなかったのでございます。
「お母さまが悪かったわ。綾乃ちゃんは一人になりたくなかったのね。一緒にお父さまのところへ行きましょうね」

あでやかな友禅のお引きずり振袖に緞子の柔らか帯を前結びにした雪乃は、赤ちゃん人形をおんぶするとねんねこ袢纏を羽織ったのでございます。
こんな姿でお義父さまのお寝間へ…お母さまの留守を良いことに雪乃はとんでもない企てを実行しようとしているのでございました。
「お母さま、淫らで恥知らずな雪乃をお赦しください・・・」
雪乃はそう心の中で詫びながらお義父さまのお閨へと歩を進めたのでございます。