玉の緒の長き袂を・・・

肩からすうーっと床に垂れた極彩色の細長い練り絹。
振袖の魅力は何といってもその長く豊かな袂だ。
着る人の動き合わせて優雅に舞うその様はなんとも形容しがたい。
女なら一度は着てみたいと思うのは無理もないことだ。
それどころか男でさえ虜にしてしまう魔力を秘めている。
その哀れな犠牲者がこの私なのだが…

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お見合い写真じゃないのだからこんな畏まった姿はあまり面白みがない。
せっかくの長い袂、そのままではつまらないのでちょっと揺らしてみた。

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 踊りの心得でもあれば少しは様になるのだろうが、その方面は全く不調法なのでむやみに体を動かすだけで、それこそ芸のないはなしだ。


こうして二枚襲の振袖に胸高に帯を締めて盛装していると絹に包まれる幸せを感じる。その上にちょっと身体を動かすと長い袂が微妙に揺れて新鮮な表情を見せてくれる。
そんな己の姿を姿見に映していると、倒錯感を伴った心地よさがじんわりと湧き上がってくる。
 
玉の緒の長き袂をふりそでの
奥に潜めしをのこの徴