花嫁人形

後ろ手に縛りあげられ、広間を引き回される花嫁。
なめらかな沙綾形紋綸子の白無垢に食い込む荒縄…その繩尻は男の手に握ら
れている。
うつろな目をした花嫁は白無垢の裾を引きずりながら、さまようように部屋の中をただ歩き回る。
その時花嫁の口からつぶやくような歌声が漏れる。
 
金襴緞子帯締めながら 花嫁御寮はなぜ泣くのだろ
      文金島田に髪結いながら 花嫁御寮はなぜ泣くのだろ
 
やがて繩尻は梁に結ばれた滑車に通されると、ぐいぐいと引かれ縄はピーンと張りつめる。
花嫁はつま先立ちになって悶え、ついには宙に浮いてゆらゆらと揺れ始る。
苦痛にゆがむ花嫁の顔…しかしやがてそれは恍惚の表情へと変わっていく。
 
若いころ観た映画の一場面だが、確か〝花嫁人形”というタイトルの成人映画だったように思う。
まわりから祝福されて幸せの象徴のような花嫁が、荒縄で縛られて天井から吊るされる…その映像は新鮮で衝撃的だった。
それから私の花嫁に対するイメージは清純で無垢なものから、隠微で被虐的なものへと変わっていった。
自分も花嫁姿になってあんな風にされてみたい…そんな思いに駆られて、なぜ股間が硬直していたのを憶えている。
それ以来白無垢姿の花嫁が憧れとなり、私にとって特別な存在になった。

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