雪乃幻想(12) 衣桁責めその1

お母さまの留守を良いことに雪乃は寝化粧もほんのりと艶めかしいお寝間の装いに赤ちゃん人形をおんぶしてお義父さまのお閨へと向かったのでございます。
こんな雪乃の姿を見てお義父さまはどんなお顔をなさるかしら・・・
その時ある考えが雪乃の頭をよぎり、胸が高鳴ったのでございます。
まさかそれは無理・・・雪乃はすぐにその考えを打ち消します。
・・・しかしそれはすぐに頭をもたげ、思いはより強くなってゆくのでございました。
このままの姿でお褥に召される雪乃・・・赤ちゃんをおんぶしたままお義父さまに可愛がられる雪乃・・・ああ何と淫らで刺激的なこと・・・。
そんな思いに駆られながらお閨へと続く薄暗い廊下の角を曲がった途端、雪乃は凍りついたのでございます。
「お母さま・・・」
お出かけのはずのお母さまが目の前に・・・。
「その姿は何としたことじゃ」
一瞬驚いた様子のお母さまはそう厳しく咎めたのでございました。
なぜお母さまがここに・・・思いもかけない事の成り行きに雪乃は声を上げることもかなわず、へなへなとその場に座り込んでしまったのでございます。
その姿を冷ややかに見降ろしていたお母さまは、やおら荒々しく雪乃の手を掴むと恐ろしいほど力でその手を引いたのでございます。
痛いッという間もなく雪乃はそのままお母さまにズルズルと引き摺られながら奥の間へと引き立てられたのでございます。

今頃はお義父さまのお褥で目くるめく時を過ごしているはずなのに・・・奥の間に引き据えられた雪乃は薄暗い行燈の灯を見つめながら臍を噛む思いでございました。

やがて着替えを済ませて戻ってきたお母さまの姿を見た雪乃は眼を見張ったのでございます。
何とお母さまはお引きずりに打掛をまとって御殿の上臈のようなお姿で、幅広の帯を文庫に結んだ大きな帯山が艶めかしく、胸に手挟んだ金襴の懐剣袋がそこはかとない威厳を醸しているのでございました。

雪乃はとっさに思い出したのは以前芝居で観た御所五郎蔵時鳥殺しの狂言でございます。
お殿様の正室の母百合の方は、側室時鳥が殿様の寵愛を一身に集めるのに心穏やかならず、正室の娘可愛さのあまり時鳥を散々苛め抜き、ついには嬲り殺しにしてしまうのでございます。
その凄惨な場面が鮮やかに蘇り、お母さまのお姿が百合の方に重なったのでございます。お母さまが百合の方ならさしずめ雪乃は時鳥・・・。
普段はめったにお召にならないお母さまの打掛姿は威厳に満ちてお芝居の百合の方を彷彿とさせ、雪乃は思わず身震いがしたのでござました。
お母さまは分厚い打掛の裾をさっと翻すと雪乃の前に立ち、ねんねこ袢纏の黒い襟を掴むと、
「このような格好で旦那さまのお寝間へ向かうとは不埒千番」
と一喝したのでございます。
「お、お赦しを・・・」
ひたすら赦しを乞うしかない雪乃でございました。
「妾の留守をいいことに身の程知らずな」
そう言いながら掴んだ襟をなおもぎゅうぎゅうと締め上げたのでございます。
「あ、赤ちゃんが・・・」
思わず雪乃はそう言うと、
「なに、赤ちゃんとな。そなたは赤子の母親か」
「・・・・・・」
「どうなのじゃ」
「はい・・・」
「ならばその証を見せてみよ」
「証とは・・・」
「裾前を割ってその証を示すのじゃ」
「そ、そのような、お赦しください・・・」
そんな問答を繰り返すうち被虐の悦びを刺激されて雪乃の股間は見る見るうちにその形相を変えていくのでございました。