綿入れ半纏

近年の暖冬傾向に反して今年の冬は寒さが厳しいようだ。とはいっても特別厳しいわけではなく、これで平年並みの寒さとのことだが。
綿入れ着物好きの自分にとってこの寒さはむしろ有り難いことだ。
昔からのしきたりで十月から五月までは袷をを着る時期で、三月までは綿入れを着ても良いらしい。
四月になると綿を抜いて普通の袷として着た。そのことから四月一日と書いて”わたぬき”と読ませる苗字の人がいるそうだ。
綿入れは三月までということは決まりのようだが、着始めは何月からかははっきりしていないようで、その辺は臨機応変ということか。
暖房の行き渡った現代では綿入れ着物など無用の長物で、綿入れ半纏にわずかにその形骸をとどめているに過ぎない。

ただ市販されている袢纏は例外なく筒袖か女物は船底袖で着物の上に羽織ることはできない。以前は袂袖のものも結構あったように思うが、今はシャツやジャージ等の上に羽織るのが前提だから袂袖は邪魔なのだ。
自分の着物はほとんど振袖だから袂袖でもだめで、必然的に広袖ということになってしまう。
広袖なら振袖の長い袂を下へ垂らすことができるので好都合という訳だ。
広袖の半纏は裁縫を始めたころ何枚か縫ったが、古くなったし好みも変わってきたのでまた新しく仕立ててみた。
今度はボリュームがキーポイントで綿も多めに袖や身丈も大きめにゆったりと仕上げた。

最初に仕立てた袢纏で総疋田の振袖から仕立て直したものだ。絞りの着物は薄い絹布の裏打ちがしてあることもあって着ると暖かいわれるが、綿入れにするとかなりのボリュームになる。

 

これもやや臙脂がかった総絞りの振袖から直したものだ。

手間のかかる総絞りの振袖など新品なら数十万円は下らないはずだが、それが今は中古とはいえ新品同様のものが百分の一以下の値段で売られているのだから着物衰退の象徴のようだ。

 

江戸小紋風に染め上げた京友禅小紋。ずっと前に手に入れた反物だが、手つかずのままでもったいないので袢纏に仕立てた。地味目の縮緬だが手触りがとても滑らかで袖を通すとしっとりと身体になじむ。

 

これはつい最近縫い上がったもので、蝶と花をあしらった華やかな友禅の小紋だ。

お引きずりにはやはり文庫結びの帯が相応しいが、面倒なので最近はもっぱら前結びでお茶を濁している。

それに文庫帯に半纏はちょっと不釣り合いな気がする。

 

 

袢纏ばかり何枚も仕立てても仕方ないのだが、縫っているときは楽しくてもう一枚…と気が付けば4枚も縫っていた。

裁縫は暇つぶしには恰好で、停年になってかなり経つがいままで退屈でやることがないなどということはほとんどなかった。

それに指先を使うし、頭もちょと使うから呆け防止にも多少役に立つかもしれない。

 

 

おまけの画像。