秋深し

ここ、人里離れた森の山荘は今紅葉の真っ盛りだ。

今年は晩秋になっても冷え込みが弱く色づきはイマイチだが、澄んだ青空にくっきりと映える紅葉はこの時期ならではの魅力だ。

着物好きにとってうれしい季節の到来だ。この時期何よりもうれしいのは冷房なしで好きな着物を着られることだ。

暑さ厳しい夏でも冷房すればそこは別天地、滑らかな絹の重なりを愛でることはできる。しかし行動範囲はその部屋に限られてしまい、何となくもの足らず、心ゆくまで楽しむというわけにはいかない。

時と場所を選ばず、暑さを気にしないで自由に好きなものを着られるというのはうれしいことだ。

華やかな振袖や艶やかなおひきずりは着付けも大変だしそういつもというわけにはいかない。

振袖で盛装するほどではないが、何となく絹のぬくもりが恋しい・・・そんなときにまとうのがこの着物だ。

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対丈に仕立てた綿入れで丹前のような感覚で手軽に着ることができる。薄紫地に小花をあしらった落ち着いた色柄で、シボのない縮緬の手触りがとても滑らかなだ。

重ね着フェチなので綿入れを二枚襲にしているが、対丈でお端折りがないのでとても着やすい。

外仕事ができない雨の日など、こんな姿で裁縫していたりすると絹のやさしさにしっとり包まれる感じがして心安まるのだ。

 

しかし普段着とはいえいつの間にか滑らかな絹の感触に刺激されて、心が昂ぶってくることがある。そんなときは心安まるなどといってられなくて、地味な綿入れを脱ぎ捨て、艶やかなお引きずり振袖に着替えてしばし陶酔の一時を過ごすことになる。

 

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