引き振袖三枚襲

引き振袖といえば嫁入り前の娘の盛装だ。昔は姫君や大店の娘などごく限られた女たちしか着ることができなかった。
長い袂をひらひらさせて、裾を引きずっていたのでは仕事はおろか家事さえ思うに任せないだろう。箸より重いものを持つ必要のない女たちしか着ることができないのも宜なるかなだ。
着物にもいろいろあるが、その華麗さ優雅さにおいて引き振袖が頂点だろう。
着物は格が上になるほど重ね着をする。引き振袖は最高の正装なので三枚襲が正式だ。
昨今のTV時代劇などを見ているとほとんどが二枚襲だが、昔のTVや映画などではきちんと三枚重ねている。
とはいえ、それらは全て比翼仕立てで、本格的な三枚襲ではない。

 

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写真は昔の婚礼衣装だが、白、赤、黒地の三枚の着物それぞれに同じ文様を染め抜いた贅を極めた引き振袖三枚襲だ。
白赤黒の順に重ねて着るのだが、白と赤の着物は下に重ねるので模様は全く見えない。そこにあえて手間暇掛けて豪華な模様を施すというのが粋ということなのだろう。
そんな豪華な三枚襲には及びもつかないが、まねごとをしてみた。
以前仕立てたお引きずり用の下重ねに桃色と真紅の引き振袖を重ねたものだ。

 

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