雪乃幻想(4)
その日は春も間近というのに夕方から雪もちらつき、底冷えのする晩でございました。
こんな日は好きな重ね着をして絹のぬくもりにくるまれるのがこの上ない悦びなのでございます。
はじめにたっぷり真綿を含ませた真っ赤な綸子のお襦袢をまとい、その上に鹿の子の綿入れ襦袢を重ねました。
綿入れ襦袢二枚重ねでございます。
お着物も綿入れで、薄桃色綸子引き振袖三枚襲をゆったり衣紋を抜いてまといました。
五枚重ねの分厚い綿入れが雪乃の華奢な身体を包み込んで、とろけるような心地よさでございます。
「こんな着付けには硬い帯よりもこちらのほうが良いでしょう」
お母さまそういいながら朱の紋緞子のやわらか帯を前結びにしてくれたのでございます。
これが今宵雪乃のお寝間の装い・・・
「今宵もたんと可愛がってもらうのですよ」
そういうお母さまの声を背に、雪乃はお義父さまのお閨へと向かったのでございます。