引き振袖三枚襲その二
重ね着の場合色の薄いものから重ね、濃いものを一番上に着るのが収りがよいようだ。
前回は桃色の上に真紅を重ねたが、あえて逆にして桃色を上にして着てみた。
この三枚のお引きずりは全く同じ寸法に仕立ててあるので、どのような順に重ねても裄や丈などに不都合は生じない。
とはいえ厳密に言えばふきがきれいに重なって見えるようにするには、裄や身丈の寸法を数㎜ずつ変えなければいけないのだが・・・。
汎用性と利便性を考えると全て同じ寸法にするのが手っ取り早いのだ。
この桃色の引き振袖は軽目の綸子で手触りがとても滑らかなので、一番上に着たくなるのだ。
そんなすべすべのお引きずりにゴツゴツした硬い織の帯はそぐわないような気がして、芯のない柔らか帯を前結びにしてみた。
昔の御殿女中たちも昼の勤めのときは重い丸帯をきりっと文庫に結んでいたが、勤めを終えて自室で寛ぐときはこんな姿をしていたようだ。
歌舞伎の加賀見山で岩藤に草履打ちの辱めを受け、傷心の中老尾上が下女のお初に慰められる有名な場面があるが、その時の尾上の姿がちょうどこんな感じだ。
芝居ではそれから間もなく尾上は自害することになるのだが・・・。