裁縫は楽し

裁縫に目覚めたのは定年退職後だからそう遠い昔のことではない。
動機は自分の着たい着物が無く、自ら縫うしかなかったからだ。
それというのも自分が着たい着物は現代風のすっきりした着物を一部の隙もなくきっちりと着るのではなく、昔風の着物をゆったりと着たいからだ。
一言でいうと時代劇に出てくるような武家娘や奥方、姫君などの着物だ。
袖口や裾のふきはたっぷり綿を含んで厚く、お引きずりなら申し分ない。
そんな着物は今どき舞台衣装くらいで、市販されていないので自分で縫うしかないのだ。
最初はなかなかうまくいかず失敗ばかりだったが、何枚か仕立てるうちに要領がわかり、徐々に満足のいくものが縫えるようになってきた。
そうなると縫うことが楽しくなり、次々にいろいろな着物を仕立ててきた。
その中でも最近はお引きずりを仕立てることが多い。
お引きずりは長く裾を引いた姿が艶めかしく昔から憧れだった。TVや映画で見るその姿がまさか現実のものになるとは思ってもいなかった。
自分で仕立てられるとは思ってもいなかったし、仕立ててみようとさえ思わなかった。
だから今こうして自分にぴったりの寸法で好みの色柄のお引きずりを着ることができるのは夢のようだ。

裁縫することが楽しいので、長い間楽しもうとなるべくゆっくり仕立てるのだが、毎日やっていると少しずつだが着実に完成に近づく。
最初はゆっくりなのだが、作業が進んで裾合せの頃になって先が見えてくると、早く着てみたくなりついついピッチが上がってしまう。
そうして出来上がったときは最高にうれしいのだが、それが同時に寂しさの始まりでもある。
明日から何をしよう・・・今の自分には裁縫に勝る楽しみはないのだ。
結局また新しい着物の仕立てに取りかかることになる。

 

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最近仕立てたのは真紅の引き振袖だ。
地紋は本紋で綸子のように見えるが、緯糸に撚りがかかっているので純粋の綸子ではないようだ。綸子縮緬というものか。
縮緬特有のシボはないが、手触りは綸子のようなしっとり感はなく、さらっとした風合いだ。

袖口と裾のふきにはたっぷりと綿を含めた。

 

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