前回取り上げた極太ふき引き振袖二枚重ねに文庫帯を締めてみた。
花魁が着るような艶めかしい衣裳に、武家娘や奥方の象徴である文庫帯の取り合わせは奇妙で違和感をぬぐえない。
でも常識の枠を超えたところに意外な新鮮さや面白みがあるものだ。
鬼平の奥方の久栄はいつも慎ましやかなお引きずりに文庫帯をきりっと結び、典型的な武家の妻女のたたずまいだが、もしそのお引きずりの裾がこんなに太かったらと想像してみる。
貞淑で犯しがたい気品のある久栄のイメージが薄れ、何やら妖艶で蠱惑的な久栄になるような気がする。
花魁の同抜き衣装に文庫帯を締め、懐剣を胸に手挟んだ久栄の艶姿・・・是非見てみたいものだ。