文庫結び



近頃帯結びにはまっている。
私は女の着物が好きでいままで色々な着物を集めたり着たりして楽しんできたが、帯にはあまり興味がなかった。
本来着物とは帯を締めてこそその優雅な美しさが発揮されるものだ。
しかし私は絹の着物の滑らかな肌触り、しなやかさ、妖しい色艶に惹かれるあまり、それをまとうことで十分満足して帯はあまり気にしていなかった。
せいぜい半幅帯を貝の口に結ぶだけで満足していた。振袖に貝の口とは妙なものだが、それで豊かな絹の魅力を堪能することができた。
しかしこのところ少し考えが変ってきて、着たときの着物本来の優美さを求めてみたくなった。遅ればせながら帯の魅力に目覚め始めたというところだ。
 
数ある帯結びのなかで美しさ、気品、格調すべての面で文庫結びに勝るものはないだろう。
末広がりの単純な形の中に安定感のある優美さと、凛とした気高さが感じられる。
しかし現実にはこの魅力的な帯結びはあまり活用されているとは言いがたい。花嫁の掛下の帯結びとしてはなくてはならないものだが、普段はあまり目にすることはないようだ。
見るのは専らテレビの時代劇の中だけというのは少し寂しい。

成人式の振袖といえばふくら雀が定番だが、華やかさはあるが平板でそれほど魅力的な帯結びとは思えない。
落ち着いた色柄の振袖に文庫の帯を締め、丸ぐけの帯締めをきりっと結んだら、その控えめな美しさがかえって人目を引くと思うのだが。
振袖に限らず、文庫結びはもっと様々なシーンで活躍の場はあるはずだ。
訪問着や付け下げ、街着などお太鼓結びにする人がほとんどだが、文庫にしても全然おかしくないと思う。
 
それはともかく、私は帯結びはとても難しく一人では結べるものではないと思っていた。
それで文庫を締めてみようと思ったときは、迷わず作り帯にして結んでみた。
でもどうもうまくいかなかった。羽根が下がってしまい、高い位置に結べないのだ。
そこで色々考えてみた結果、手結びでできないだろうかと思った。
文庫結びは外見もシンプルだが、結び方も至って単純なのだ。
要は帯を一結びして、垂れに襞をとってその上から手先を巻きつけ、帯締めで押さえるだけだ。
それを後ろでやるのは蛸でもない限り無理だが、前で結んで後へまわせばそれ程難しいことではないのではないか。
何回か試行錯誤を重ねるうちだんだんこつがつかめてきて、手結びで何とか格好がつくようになった。
見る人が見ればいろいろ問題もあるだろうが、自分で楽しむだけだからまあこの程度でいいか。
自分としては文庫の羽根は長いほうが好きなので、標準より少し長めにしてみた。
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